CASE STUDY

ケーススタディ

インサイツ自主調査レポート
海外消費の新税制と爆買への影響
   少し前の話になりますが、今年の4月8日、上海の浦東国際空港で撮影された写真が話題になりました。海外から帰国した旅行客のお土産が、空港のホールに「ばらまかれている」写真です。メッセージには「買い忘れた化粧品はある?浦東T1ターミナルに拾いに行きなよ、いまなら捨てたほうがましだし、税も払いたくない(呪)」とあり、新しい税制が敷かれたことがわかりました。海外消費に対する税制度が厳しくなったのです。

   空港ホールに「ばらまかれた」土産物は、一部で噂されていたような廃棄や没収ではなく、荷を解かれて検査を受けている様子だったのですが、それにしてもこの写真の影響は大きく、中国の各ポータル掲示板でも議論になっていました。なかには、税を払いたくないために一部の商品を放棄した人もいたそうです。一方、日本ではこれが中国人による「爆買の終焉」だ、との見方も出されました。

   弊社では「爆買はこれから下り坂になるのでは」というお客様の声も聞かれますし、「爆買を見込んで積極的にアプローチしたい」というお客様もみえます。爆買に関連する調査も毎年ご依頼頂いており、全体として関心はまだまだ高いように思います。それでは、上記の新税制は爆買に冷や水を浴びせることになるのでしょうか。今回はちょっと趣向を変えて簡単な調査をご紹介したいと思います。

   調査はインサイツが2016年5月に中国全土の1000人を対象にインターネット調査を実施、海外旅行経験と今回の海外消費に対する税制改革を中心に聴取を行いました。

   「新税制はあなたの海外旅行計画に影響しますか」という設問に対する回答は以下のようなものでした。

   A 影響はとても大きい、海外旅行の楽しみが減ってしまう…37.2%
   B 影響は大きくない、もともとそれほど買っていない…62.8%

   おおむね、4割弱の消費者の方が影響すると考えているようです。また、続いて「新税制実施後、また海外に行きますか」という設問に対する回答は以下のようになりました。

   A あまりいかないかもしれない、買い物が不便…15.5%
   B また行くだろう、これからも買い続ける…30.0%
   C また行くだろう、しかし買い物は減らす…54.5%

   まったく影響を受けないと回答しているのはわずかに30%程度であり、ある程度の影響を受けることが予想されます。

   ただし、問題は日本への観光客の消費行動にどのような影響があるか、また、他国への観光と比較して影響に差異はあるのか、などが重要です。そこで、上述の設問と、過去に行ったことがある国・地域をかけあわせてみます。結果はどう変わるでしょうか。日本・韓国へ行ったことがあると回答した453名と、欧米へ行ったことがあると回答した217名を分けて算出してみたいと思います。

   日本・韓国旅行経験者(453人)
   A 影響はとても大きい、海外旅行の楽しみが減ってしまう…38.0%
   B 影響は大きくない、もともとそれほど買っていない…62.0%
 

   欧米旅行経験者(217名)
   A 影響はとても大きい、海外旅行の楽しみが減ってしまう…46.1%
   B 影響は大きくない、もともとそれほど買っていない…53.9%

   結果、日本や韓国を訪れたことのある人よりも、欧米に訪れたことのある人のほうが影響が大きいと考えていることがわかります。では、この差は何に由来したものなのでしょうか。直前に「海外旅行で購入するもの」を聴取しているので、これとかけあわせて、表にしてみます。

  海外旅行で買うもの
Q:海外旅行で買うもの?
欧米(217名)日韓(453名)
粉ミルク、おむつなどのベビー用品24.0%26.1%
電子製品、家電製品56.7%54.8%
輸入食品、健康食品55.3%49.7%
バス用品、化粧品43.3%43.3%
衣服、帽子、鞄、靴50.2%45.7%
時計、宝石、皮革など贅沢品35.5%29.8%
その他0.9%1.8%


   いかがでしょうか。このようにして見ると、欧米旅行経験者は、日韓旅行経験者に比べて「衣服、帽子、鞄、靴」や「時計、宝石、皮革などの贅沢品」が5%程度高いことがわかります。全体を通してみると、旅行客の消費行動に一定の影響が認められること、また、日韓旅行者よりも欧米旅行者のほうが贅沢品などの高額商品を購入する意向が強いため、より新税制の影響を深く受けやすい、ということが考えられそうです。

   さて、今回は趣向を変えて時事テーマを扱いながら、ざっくりとしたネット調査を行ってみました。ネット調査は単に設問を羅列するだけでなく、見方を変えると面白い情報が見えてきますし、様々な分析手法があります。数ある調査手法の中でも比較的安価な調査手法ですので、ご検討頂ければと思います。

   なお、今回の新税制をテーマにした調査データを、読者の皆様に無料で差し上げます。 ご希望の方は5月末までにインサイツまでお問い合わせください。