CASE STUDY

ケーススタディ

インサイツ自主調査レポート
街頭調査-場所をとらえるフィールドワーク。
    かの有名な劇作家・寺山修司には『書を捨てよ、町へ出よう』という、たいへん有名な評論集がありますが、市場調査に従事していると、この表題と似たような気分になることがあります。決してエクセルやパワーポイントを捨てたりはしませんが、調査の結果を肌感覚として掴んでおきたい、町へ出たい、という衝動に駆られるわけです。くわえて私は人類学を学んだ人間ですので、ともあれ外へ出て話をしたくなる傾向があるようです。

   さて、外へ出かけて調査を実施するとなれば、通常は定性調査が思い浮かびます。これまでにご紹介したフォーカスグループインタビュー(FGI)も、家庭訪問も、実際のところ「屋内」の調査です。一方、完全に「屋外」で実施する調査形式としては、代表的なものに「街頭調査」があります。まさに屋外で実施する調査であり、FGIや家庭訪問のように、事前予約などをしない、現場でコントロールする調査です。

   街頭調査は調査員が町へ出て(村かもしれません)、市井の生活者にアンケートを行う調査、というのが一般的な説明になるでしょう。では、こうした調査形式を採用するにはどんなメリットがあるのでしょうか。あるいは、この手法でなければならない理由は何かを問うことが、街頭調査の魅力を提示できるヒントになるかもしれません。キーワードは「場所性」です。

   以前、お問合せ頂いた例として、上海にレストランを出したいのだが、具体的な場所を決めかねている、というご相談を頂きました。ここで弊社から提案させて頂いたのが街頭調査です。ここでは、どのエリアでレストランのサービスコンセプトが受け入れられるかを調査する、という提案をさせて頂きました。特定の地域に展開するためのマーケティング調査として、候補エリアをよく利用する生活者に対してニーズを聴取するのです。

   もうひとつの例として取り上げたいのが広告効果測定です。これは街頭調査でも比較的ポピュラーな事例ですが、特定のエリアで提示された広告や、提供されるサービスに対し、このエリアを利用する生活者がどれだけ注目するのか、あるいはこれに対してどのような評価を与えるのかを聴取します。こうしたニーズは、上海をはじめ、大都市において広告掲載費用が高騰しており、少しでも効果の高い場所を選定したいという背景もあるようです。

   レストランの事例も、広告効果測定の事例も、いずれも場所性と深く結びついていることが特徴的です。言い換えれば、特定の場所で事業を展開する場合、特定の場所を利用する生活者に直接インタビューすることで、もっとも効果的な声を拾うことができる、それが「街頭調査」の特性と言えるでしょう。また、この観点からレストランや広告に限らず、その他にも特定のエリアをよく利用する若者たちにライフスタイルを聴取するなど、様々なアイデアが考えられます。

   では、こうした調査は定量的に聴取できるでしょうか。おそらく難しいと思います。FGIでも家庭訪問でも同様に、それは対象となる被験者と「場所」の繋がりが保証できなかったり、評価を拾うことができても、特定のエリアでサービスをうけた時点からタイムラグができてしまうからです。したがい、街頭調査は生活者が場所と結びついた状態において、評価を聴取できるという点で優れていると考えられます。

   最後に、街頭調査において気を付けたい点を指摘しておきたいと思います。

   ひとつは質問票の長さです。はじめに指摘したように、街頭調査はFGIや家庭訪問とは違い、被験者を事前予約しない、現場でコントロールしていく調査です。したがい、そのエリアに居合わせた人にとっては「予期せぬ出来事」になります。あくまでも善意でご協力頂くため、質問票は長くないことが望ましくなります。私の経験では、中国人を対象にするケースでは、10分を超えるとご協力頂けなくなる可能性が高くなります。

   もうひとつは、繰り返しになりますが「場所をよく理解しておく」ことです。中国ではすべての場所で自由に調査ができるとは限りません。治安を維持する「城管」や「公安」が私服で巡回しているケースも多く、調査の可否について事前の下調べが欠かせません。また、調査においては、単に特定エリアの生活者にインタビューするだけでなく、そのエリアに従事している人も含めて幅広く「立ち話」をすることで、包括的な情報収集に努めることが重要だと思います。その意味では、「街頭調査」は特定の場所を理解するための「フィールドワーク」であると考えても良いでしょう。